2008年6月13日金曜日

自作漢詩 No.679 作「戊子 紫陽花」 推敲過程

南来雲走北心応

No.104「題空韻」 梅足
|凡|客|浴|沼|
|日|心|中|原|
|是|初|見|聴|
|知|思|湿|風|
|至|不|結|渡|
|処|如|空|翠|
|音|帰|韻|微|

「楽毅将軍」(1998年6月29日 梅足)
  梅足   
燕王昭能用楽毅
後君重色嵌斉兵
忠臣去国陰身潔
古聖絶交証彼正
赤水東流潮復上
白雲出岫雨初晴
海村何日招魂卜
同夜遥思月下城

「聞道」(1999/06/07 三耕)
  三耕 
宵衰鳥雀囀
独恐朝来焉
抱石冥濠沈
重荷日夜肩

「梅黄」 (2000/06/25 三耕)
  三耕   
梅黄未落山河青
多病平生数樹齢
加勝以天上以古
而今泛海観明星

[語釈]
「黄」黄色になる。
「以」もって。
「古」いにしえ。
「転句」句中対。前四字と後三字の対。

「加・上・」:

富永仲基「出定後語」の原始仏教の系譜にある「加上の原則」を引く。
「加上の原則」仏教の基になったバラモン教では、地上の苦界をを脱して天に生まれかわることを教え、新たに興った宗派は旧い宗派の説く天の上にさらに自己の天を積み上げてその優位を主張した。かくて二十八天あるに至りその無意味に気付き、生死に拘泥せず、生死を超越した自由の境地に達すべきことを説いた釈迦が登場した。しかし、仏教の宗派も新しい宗派は旧い宗派に対してその優位を主張する「加上」によって発達した。
(小乗:阿含経<大乗:般若経<法華経<華厳経<涅槃経<禅宗:楞伽経<密教:曼荼羅なる図絵を以って諸派を総合)

内藤湖南(本名:虎次郎。号は生地が十和田湖の南に当るに因んだもの)博士はこの「加上の原則」を中国古代史の研究に応用した。中国では年代的に古い時代ほど立派な時代と考えられる傾向があったので、最初に学問を興した孔子が周王朝の祖周公の昔に返すことを自己の任務と考えたのに対し、孔子より後に出た墨子は儒教に勝たんが為、周公より古い夏の禹王を以って自派学問の祖とした。
古い(孔子>墨子 >孟子>道家>農家>易学)
  (周公<夏禹王<尭舜<黄帝<神農<伏羲)より古い
以上 宮崎市定「中国に学ぶ」中公文庫『独創的なシナ学者内藤湖南博士』より


「而今」しこうして今は。
「泛」うかぶ。
「泛海」「論語」『公冶長』「子曰、道不行。乗桴浮于海」。
「明星」弘法大師空海「三教指帰」『序』

  「阿国大滝嶽に登り攀ぢ土州室戸崎に勤念す。谷響きを   惜しまず、明星来影す。」


[作法]下平声九青押韻、平起式。


「角蝸争」 (2000/06/27 三耕)
  三耕   
紫陽花裏角蝸争
加上以兄更以祖
易色賢賢処処成
吁嗟耳順不踰矩

[語釈]
「紫陽花」アジサイ。
「角蝸争」蝸牛(カタツムリ)角上之争。[「荘子」『則陽篇』]
「承句」 富永仲基「出定後語」の原始仏教の系譜にある「加上の原則」を引く。拙作「No.212 「梅黄」/2000.06.25 」。
「易色賢賢」易(トカゲ)の色は賢賢として周囲に応じて変わる。[「論語」『学而第一篇』七章]


半夏将生


完成
「戊子 紫陽花」 (2008年6月22日 海山人)
賢賢花易色
青赤自東西
楽毅陰身潔
飛鴻只踏泥

17 件のコメント:

とある者 さんのコメント...

「月満」 (2001.06.10 三耕)
  三耕 
月満月欠
天晴虚風
一葉済海
虧盈有終

[語釈]
「虚風」『易』「大有」(/)を踏まえる。
『序卦伝』「虚心に人と協同する者は、万物必ずこれに帰す」。

「一葉済海」 
達磨禅師(万物帰一の者)が葦の葉に載って長江を渡った故事。

「虧盈」『易』「謙」(/)を踏まえる。
彖に曰く、謙は亨る。天道下済して光明なり。地道卑くして上り行く。天道は盈てるを虧いて謙に益し、地道は盈てるを変じて謙に流き、鬼神は盈てるを害して謙に福いし、人道は盈てるを悪んで謙を好む。謙は尊くして光り、卑けれどもこゆべからず。君子の終りなり

「有終」『易』「謙」『謙は亨る。君子は終り有り』を踏まえる。
『序卦伝』「所有の大なる者は盈ちてはいけない。謙遜が必要である」。

 又、「詩経」大雅『蕩』を踏まえる:

初め有らざるなし、克(よ)く終り有るもの 鮮(すくな)し。
(中略)
殷鑑(殷が手本とすること) 遠からず、夏后の世に在り。


[作法]上平声一東押韻。古体。

[読下例] 月満ち 月欠ける
天晴れて 虚風
一葉 海を済れば
盈てるを虧いて 終わり有り

とある者 さんのコメント...

「六月蓮」 (2004年6月6日 海山人)   海山人
慈雲六月雨休青
造物賀天営大生
蓮葉田田蓮径細
魚戯跳水送波情

とある者 さんのコメント...

「一朝三雨」 (2004年6月6日 海山人)   海山人
一朝三雨客留行
路傍紫陽花愈青
恐是空知難再会
笑声幾度労労亭

[語釈]
「一朝三雨」朝のうちに三度の雨。『荊楚歳時記』六月。
「紫陽花」アジサイ。
「労労亭」労(平声)を労う(仄声)亭。旅立つ人を送る亭。

[作法]下平声八庚、下平声九青通韻。平起式。

[読下例]
一朝三雨 客 行を留め
路傍の紫陽花 いよいよ青し
恐くは是れ空しく知る 再会難しと
笑声 幾度[上がるか] 労労亭

とある者 さんのコメント...

「薇蕨」ぜんまいとわらび。また、伯夷・叔斉の故事。
伯夷と叔斉は周の武王が殷の紂王を討伐せんとしたとき、それを不忠・不孝として諫めたが、聞き入れられなかった。天下が周に帰属すると、周の穀物を食べることを恥じ、首陽山で薇のみを食してやがて餓死した。

采薇歌

登彼西山兮 采其薇矣
以暴易暴兮 不知其非矣
神農 虞 夏 忽焉沒兮 我安適歸矣
于嗟徂兮 命之衰矣

かの西山に登り その薇を采る
暴を以て暴に易え その非を知らず
神農・虞・夏 忽焉として没す 我いずくにか適帰せん
于嗟徂かん 命の衰えたるかな

尚、『詩経 小雅 鹿鳴之什』「采薇」とは別。

とある者 さんのコメント...

「五月雨」 (2005年6月11日 海山人)
  海山人
一雨知天下
遠雷轟衆山
初晴湖水穏
橋上待何顔
[語釈]
「衆山」杜甫『望嶽』より。

岱宗夫如何、齊魯青未了。
造化鍾神秀、陰陽割昏暁。
盪胸生曾雲、決眥入帰鳥。
會當凌絶頂、一覽衆山小。

岱宗それ如何、齊魯 青未だおわらず。
造化 神秀をあつめ、陰陽 昏暁をわかつ。
胸をうごかして 曾雲生じ、まなじりを決して 帰鳥入る。
かならず まさに絶頂を凌ぎて、一覽すべし 衆山の小なるを。

  関連作: 「聞登黄山」 (2001.08.23 三耕)

「何顔」何の顔をもってか。

[作法]上平声十五刪押韻。仄起式。

[読下し例]
一雨 天下を知る
遠雷 衆山に轟く
ようやく晴れて湖水穏やかに
橋上 何の顔をもってか待たむ

とある者 さんのコメント...

「紫陽花」 (2006年6月25日 海山人)

■漢詩
  海山人
若橘差南北
土為紫白青
振衣用亦舎
濯尽淮江清

■解説
語釈
「橘」南方と北方で実の味が変わる。
「淮江」中国の濁る川。清い渭水に対す。

作法
下平声九青八庚通韻。仄起式。

読下し例
橘の南北で差あるがごとく
土 紫白青を為す
衣を振ひて 用いるか舎つるか
濯い尽くして 淮江清し

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南来雲走北心応
不如帰
白雲出岫雨初晴

加上の原則
仏教の基になったバラモン教では、地上の苦界をを脱して天に生まれかわることを教え、新たに興った宗派は旧い宗派の説く天の上にさらに自己の天を積み上げてその優位を主張した。
仏教の宗派も新しい宗派は旧い宗派に対してその優位を主張する「加上」によって発達した。

内藤湖南博士はこの「加上の原則」を中国古代史の研究に応用した。
中国では年代的に古い時代ほど立派な時代と考えられる傾向があった

大阪の町人學者富永仲基
内藤湖南
http://www.aozora.gr.jp/cards/000284/files/1735_21416.html

「論語」『公冶長』「子曰、道不行。乗桴浮于海」。

「明星」弘法大師空海「三教指帰」『序』

蝸牛(カタツムリ)角上之争。[「荘子」『則陽篇』]

「易色賢賢」易(トカゲ)の色は賢賢として周囲に応じて変わる。[「論語」『学而第一篇』七章]

とある者 さんのコメント...

「虚風」『易』「大有」(/)を踏まえる。
『序卦伝』「虚心に人と協同する者は、万物必ずこれに帰す」。

「虧盈」『易』「謙」(/)を踏まえる。
彖に曰く、謙は亨る。天道下済して光明なり。地道卑くして上り行く。天道は盈てるを虧いて謙に益し、地道は盈てるを変じて謙に流き、鬼神は盈てるを害して謙に福いし、人道は盈てるを悪んで謙を好む。謙は尊くして光り、卑けれどもこゆべからず。君子の終りなり

魚戯跳水送波情

「一朝三雨」朝のうちに三度の雨。『荊楚歳時記』六月。

「薇蕨」ぜんまいとわらび。また、伯夷・叔斉の故事。

とある者 さんのコメント...

「橘」南方と北方で実の味が変わる。

とある者 さんのコメント...

紫陽花   白楽天

何年植向仙壇上  何れの年か 仙壇上に植えるも
早晩移栽到梵家  早晩移し栽えて梵家に到る
雖在人間人不識  人間に在りと雖も人識らず
与君名作紫陽花  君に名を与えて紫陽花と作す

とある者 さんのコメント...

東方持国天、西方広目天、南方増長天、北方多聞天.

とある者 さんのコメント...

空韻
忠臣去国陰身潔
白雲出岫雨初晴
梅黄
加勝以天上以古 加上の原則
明星来影
紫陽花
易色賢賢
魚戯跳水送波情
一朝三雨
薇蕨
采薇歌
橘差南北
南来雲走北心応
南方増長天、北方多聞天

とある者 さんのコメント...

賢賢花易色
空韻
去国忠臣陰身潔
白雲抱石出岫雨初晴

とある者 さんのコメント...

賢賢花易色
空韻
楽毅陰身潔
先君白雲抱石幽

とある者 さんのコメント...

「留爪文」蘇軾 「和子由ベン池懐旧」より
和子由澑池懐旧

人生到処知何似、応似飛鴻踏雪泥。
泥上偶然留指爪、鴻飛那復計東西。
老僧已死成新塔、壊壁無由見旧題。
往日崎嶇還記否、路長人困蹇驢嘶。

とある者 さんのコメント...

和子由澠池懐旧

とある者 さんのコメント...

賢賢花易色
青赤自東西
楽毅陰身潔
一鴻只踏泥

飛鴻只踏泥